評論

心のなかの泉を照らす、太陽のように。

エコール・デ・ルーヴル(ルーブル美術学院)教授/美術評論家員
エリック・モンサンジョン

 まるで太陽のように朗らかな作品の数々です。Rii.氏は私たちを包み込み、見守るような作品を生み出すアーティストです。

 Rii.氏の作品は、心のあるままに描かれています。そこからアーティストとしての純粋さと、真摯な作品に向き合い、創作に取り組む姿勢が強く感じられます。陽が昇るとき、やがて沈んでいくときに誰しもがおぼえる感動にも似た思いが胸に沸きあがりました。Rii.氏は我々の心を優しく照らす太陽のようなアーティストともいえるでしょう。

 特筆すべきは、豊かな色づかいと表現力です。そこには、Rii.氏の心が投影されているのでしょう。その輝くような美しさには驚かされました。色彩感覚という点においては、色が鑑賞者にもたらす影響力をよく理解し、ペールやソフトといったトーンの効果をうまく使っています。Rii.氏の色づかいは「あたたかさ」や「癒し」を感じさせてくれます。それらは作品世界を生きる登場人物たちの肌や髪の色にも見られ、そこで生きる者としての存在感を放っています。背景に用いられる素晴らしいグラデーションからは、作品世界における「幸せ」が感じられるようです。

 ミクストメディア作品には、一般的な画材と本物の花とを組み合わせた作品があります。その発想には、とても惹かれました。ドライフラワーで表現したところにはさまざまな色の要素があり、際立っています。しかし、立体的な部分と平面的な部分とは衝突することなく、その周辺に描かれる者たちと調和し、ひとつの作品として統一感があります。実際に作品を目にした方は、きっとその美しさと驚きに心を奪われるでしょう。

 作品に登場する人物たちは、優しさと幸福に満ちています。愛らしく、無邪気です。アーティストが思い描く世界がはっきりしており、表現力や技術が確かだからこそできる表現です。現実にあるものをそのまま描く技量も大切ですが、空想上の風景や、かたちのない感情、そして理想を描くことは、表現力や想像力、そして経験の積み重ねによって成し遂げられるのです。Rii.氏の持つ心の豊かさや潤いは、ここにも表れています。

 Rii.氏の作品には、2つの効果があるように思います。ひとつは第一印象としての美しさや癒し。もうひとつは、そこに描かれる人物と自分自身を重ねることで、作品世界を生きる楽しみが得られることです。特に『Eternity』と『あいのわ』の2作品からは、それを強く感じました。Rii.氏が描いた物語は、私たちの心にしみこむようにして完成するのです。

 複雑な感情、穏やかな表情、あたたかな色づかい、筆さばきを活かした優しい雰囲気。それは心のなかの無限の泉を照らす太陽のよう。Rii.氏の作品には、そんな魅力があります。